デスクリサーチをベースとした市場のトレンド分析を元に、サービス / プロダクトの改善・開発を行います。未来の生活者や市場動向を事業に活用したいクライアント様向けのパッケージとなります。
私もこの会社に入ってきた時は、MVPと聞いて野球とかのMost valuable playerをイメージしていましたがもちろんそうではありません。事業開発におけるMVPはとても大事な考え方です。この記事ではMVPとは何か、その必要性について説明していきます。
MVPとは
MVPとは、Minimun viable productの訳で、直訳すると「最小限の実用的な製品」という意味です。我々はこれを「MVPを顧客からの共感を呼び、顧客の行動を促すことができる最も実用的な単機能」と解釈します(理由は後述)。新しい製品やサービスを開発する際に、最小限の機能や特徴だけを持ったプロトタイプを作成し、それを市場に投入する手法に使われます。
なぜMVPが必要なのか。MVPを定義しないとどうなるか
新商品開発においても、新規事業開発においても、もちろん顧客の声を聞くことは大切です。しかしながら日本の、特に大企業が陥りがちなミスとしては「できるだけ多くの顧客の声を集めて、最大公約数的な新規事業を作ることが多数のニーズを叶えることができて良いのである」と思いがち、ということです。
これは私も前職で新規事業をやっていた際に陥ったのですが、多くの顧客の要望をできるだけ沢山叶えようとすると、以下のような弊害が起きます。
- 開発期間・コストが莫大になる
- ターゲットペルソナが広範になるため、訴求ポイントがぶれる
開発期間・コストが莫大になる
広範な顧客をターゲットにしてしまうと、開発期間が平気で年単位かかってくるのでその間に市場トレンドが変わったり、競合に当たるサービスがローンチしたりして市場環境が変わることがあります。また社内でも幹部や経営方針の変更により新規事業の方針が変わってしまうことがあり、構想中の新規事業を検証が足らない状況でローンチさせることを会社に求められたり、場合によっては新規事業の計画を中断されることがあります。このように中止された場合や、ターゲット検証の結果ニーズがないことがわかりピボット(方針転換)を迫られた場合はサンクコストも膨大になります。
ターゲットペルソナが広範になるため、訴求ポイントがぶれる
ペルソナが広範にわたる抽象的なものとして設定した場合は、顧客にとって魅力的な訴求ポイントがぶれ、
- ユーザーにとってのメリットが伝わりづらくなる
- 既存のプロダクトとの違いがわかりづらくなる
という危険性があり、ユーザーを獲得できず新規事業をスタートさせても顧客が獲得できないということになりかねません。
MVPがあると何が良いか
MVPを定義するには「そのプロダクト(商品やサービス)があることでどのような顧客がどう嬉しいか」をはっきりさせる必要があります。そのため
- 顧客ペルソナの明確化
- 他の何かではなく、このプロダクトでなければいけない理由。顧客から見た競合サービスとの違い
- 解決したい「不」は実在するのか
などの検証をする必要があります。また冒頭で定義した通りMVPを「顧客からの共感を呼び、顧客の行動を促すことができる最も実用的な単機能」と考えておけば、検証の際にもペルソナに合致する初期顧客にプロダクトのコンセプト・哲学を記載した営業資料(我々はこれをペーパープロトと読んでいます)を作成し見せることで顧客の課題の仮説をブラッシュアップすることができます。検証のフェーズについての詳細はPoCの記事に譲ります。
MVPを作る際のコツ
「顧客からの共感を呼び、顧客の行動を促すことができる最も実用的な単機能」であるMVPを作る際に重要なのは、
- 顧客の評価(「良いと思う」など)だけでなく行動を促す(「これならお金を払って導入する」など)ことを目的とすること
- 機能を詰め込みすぎず、実現可能かつ強烈な単機能のみに特化して実装すること
と考えています。
もしこれらを考慮していないと、プロダクトの検証をした時に
- 「良いと思う(ただし、私は金を払ってまで使わないけど)」という評価をもらってしまう
- 複合的な機能に対して良いといってもらっても、実際顧客に響いたのがどの機能なのかよくわからない
といったことになってしまい、実装の際のノイズ情報となってしまいます。そのためMVP作成の次のステップとなる実証実験(PoC)においてもユーザーへの考え方、伝え方を考慮する必要があります。
> MVP作成が完了したら検証し、PoCのステップに移ります。
検証手法は大きくわけて4つありますが、こちらは上記リンクのPoCの記事に内容を譲ります。
検証はできるだけ小さく早く回すことが重要であるため、投資を抑えつつプロダクトのブラッシュアップのための学びを得ることが最大の目的であることを理解し、プロダクトの外見を美しく整えたり、オペレーションの自動化などはこのステップでは実施しないことが多いです。
“義憤発想”が有効
ユーザーの需要性が高いMVPを作るためには、BtoCの事業においてはもちろん、BtoBの事業においても最終ユーザーは一般顧客になるため(BtoBtoC)、生活者の潜在的な欲求に応えているかが重要であるとSEEDERは考えています。この潜在的な欲求を我々は”義憤”と読んでいますが、この義憤は、顕在している不足に対する欲望である「ニーズ」とは対極的なものであると考えています。
顕在化している欲望であるニーズは既存市場・既存顧客に対する商品開発として有効である一方、義憤は新市場・新顧客に対する新商品・新サービス(=新プロダクト)開発に有効であると考えています。
義憤発想をもつ”トライブ”
例えば2022年に街のコンビニにも並ぶようになった完全栄養食でBASE BREADというものがありますが、完全栄養食は元々はアメリカの西海岸:シリコンバレーの多忙なシステムエンジニアが忙しい平日の昼食として元々はスナック菓子を食べていたが、スナック菓子だと栄養が偏り体調を崩してしまうし、手が汚れるので「栄養を考えることなく、これだけ食べていれば大丈夫というパソコン仕事の片手間で食べられる手の汚れない昼食はないか」という義憤から開発されたものです。
SEEDERでは2015年ころに上記のような考えに共鳴した一部の若者がわざわざ海外から取り寄せて食べていたことを発見し、彼らを「ドクターシューマー」というトライブであると定義をし洞察を深めていました。
今やBASE BREADはダイエット食品としてオンラインメディアにも広告を出稿し、コンビニにも並ぶほどに一般化しました。運営会社は上場を果たしています。
我々はこの完全栄養食を食べて効率的に体調管理をする若者の登場から、「義務食」と「娯楽食」の二分化や、他多くの未来を洞察しました。
SEEDERはトライブデータを元に未来洞察をしています
SEEDERはこういった「先進的な生活者」であるトライブの定性データを120種類ほどストックし、専門のアナリストが毎日情報を追加・更新しています。このトライブデータを活用したソーシャルインパクトのある、かつ根拠のある新商品や新規事業の伴走支援を行っております。
SEEDER独自の先進的な生活者「トライブ」についてはこちら
>トライブとは
MVP定義の次のステップ、PoCについてはこちら
> 新規事業開発におけるPoCの重要性