マーケティングの世界では、定量調査と定性調査の両方が重要な役割を果たしています。定量調査は数値データを用いて市場の動向や消費者の行動を分析するのに対し、定性調査は消費者の本音や深層心理を理解するための手法です。
しかし、多くのマーケティング担当者は、数値データの分析には自信を持っていても、定性調査には苦手意識を持つことが多いです。定性調査は、消費者の意識や感情を深く掘り下げることで、マーケティング戦略に新たな視点を提供します。
この記事では、定性調査の基本的な手法やその重要性について詳しく解説し、動画を交えて実際の活用シーンを紹介します。これにより、あなたのマーケティングスキルを向上させ、プレッシャーの中でも自信を持って仕事に取り組めるようになるでしょう。
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マーケティング戦略における定性調査とは?
マーケティング戦略において、定性調査は消費者の深層心理や行動の背景を理解するために不可欠な手法です。数値データだけでは把握しきれない消費者の本音やニーズを引き出すことで、より効果的なマーケティング施策を立案することができます。
ここでは、定性調査の具体的な役割や目的について詳しく見ていきましょう。
定性調査の役割・目的
定性調査の役割は、消費者の行動や意識の背後にある動機や感情を理解することです。この調査方法は、インタビューや観察を通じて、消費者が何を感じ、何を考えているのかを深掘りします。
例えば、新製品のコンセプトテストでは、消費者の反応やフィードバックを詳細に収集し、製品の改善点を見つけることができます。また、ブランドイメージの調査では、消費者がどのようにブランドを認識しているかを把握し、ブランド戦略の見直しに役立てることができます。
したがって、定性調査は単なるデータの収集ではなく、消費者の本音を探ることで、より説得力のあるマーケティング施策を導き出すための重要なプロセスです。
定性調査と定量調査の違い
定性調査と定量調査は、それぞれ異なる目的と方法を持っています。定量調査は、数値データを集めて統計的に分析することで、消費者の行動パターンや市場の動向を明らかにします。例えば、アンケート調査を実施して製品の満足度を数値化したり、販売データを分析して購買傾向を把握したりすることがこれに該当します。
一方、定性調査は、数値データでは捉えきれない消費者の深層心理や動機を理解することを目的としています。インタビューや観察を通じて、消費者の考え方や感情を掘り下げることで、製品やサービスに対する潜在的なニーズを発見することができます。例えば、新製品のコンセプトに対する消費者の反応や、広告キャンペーンの印象について詳しく聞き出すことができます。
このように、定量調査は「何が起こっているか」を明らかにするのに対し、定性調査は「なぜそれが起こっているのか」を理解する手助けをします。両者を組み合わせることで、マーケティング戦略の精度を高め、より効果的な施策を立案することが可能になります。
定性調査と定量調査の違いはこちらの記事で詳しく解説しています。
定性調査の調査手法
定性調査にはさまざまな手法があり、それぞれに特徴と適したシチュエーションがあります。これらの手法を理解し、適切に活用することで、消費者の深層心理を効果的に引き出すことができます。
続いては、代表的な定性調査の手法を詳しく解説します。ここで紹介する以外にも、定性調査の方法はいくつかあります。詳しく知りたい方は、以下のリンクより資料をダウンロードしてみてください。
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グループインタビュー(FGI)
グループインタビュー(フォーカスグループインタビュー)は、複数の参加者が一堂に会し、特定のテーマについて自由に意見を交換する形式の調査手法です。この方法では、多様な視点や意見を一度に収集でき、参加者が互いに触発されて新たな考えを生み出すことが期待できます。
例えば、新製品のアイデアを評価する際に、消費者の反応をディスカッションから得ることができます。ただし、参加者の発言が他のメンバーに影響を与える可能性があるため、司会者のスキルが重要となります。
グループインタビュー(FGI)については、こちらの記事で詳しく解説しています。
デプスインタビュー(IDI)
デプスインタビュー(In-Depth Interview)は、個別に行う詳細な面接形式の調査手法です。この方法は、参加者の意見や感情を深く掘り下げることができます。新しいマーケティングキャンペーンの反応を探る際に、消費者の深層心理を詳細に聞き出すことができます。
インタビュアーは質問を柔軟に変更しながら進めることで、表面的な意見だけでなく、背後にある動機や感情を明らかにします。ただし、時間とコストがかかる点がデメリットです。
デプスインタビュー(IDI)については、こちらの記事で詳しく解説しています。
行動観察(エスノグラフィー)
行動観察(エスノグラフィー)は、消費者の日常生活や行動を直接観察する調査手法です。この方法では、消費者が自然な環境でどのように製品やサービスを使用しているかを観察し、リアルな洞察を得ることができます。
例えば、家庭用品の使い勝手を評価する際に、消費者の実際の使用状況を観察して製品の改善点を見つけることができます。時間とコストがかかる手法ですが、得られる洞察は非常に価値があります。
エスノグラフィーについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
参考:エスノグラフィーとは?【学術的な意味からビジネスにおける使い方まで徹底解説!】
訪問調査(ホームビジット)
訪問調査(ホームビジット)は、調査者が消費者の自宅や職場を訪問し、生活環境や日常行動を直接観察する調査手法です。この方法では、消費者のリアルな使用環境を観察し、具体的な問題点や新たなニーズを発見することができます。
例えば、家庭用電化製品の使い勝手を評価する際に、実際の使用状況を観察して製品の改善点を見つけることができます。ただし、消費者のプライバシーに対する配慮が必要であり、時間とコストもかかります。
定性調査のメリット・デメリット
定性調査は、主に感情や意見、態度、行動などの主観的な要素を探求するために用いられます。マーケティング戦略を立てる際に用いれば、消費者の心理や行動原理を捉えることができ、収集したデータはアイデアの源泉となります。しかし一方で、定量調査と比べると、サンプル数が制限されることや、調査者のスキルが不足していると、主観が反映されてしまうというデメリットもあるため、注意が必要です。
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定性調査のメリット
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定性調査ではオープン・クエスチョンやそれまでの行動や会話にもとづき、より深く理解するための質問を調査対象者へ投げかけることができます。柔軟性のある質問ができるため、定量調査ではわからない消費者のニーズや行動背後にある価値観を掘り下げ、深く理解することができます。
また、定性調査では消費者の嗜好やトレンドの変化といった情報も得られるため、マーケティング戦略を市場の変化に適応させることも可能です。このような定性調査で得られるリアルな消費者の声や意見は、新たな製品やサービスの開発にも活かせるでしょう。
参考:新規事業の定性調査のやり⽅とポイント!成功率を⾼める⽅法とは?
定性調査のデメリット
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一定の期間を設けて多数に回答してもらう定量調査とは異なり、定性調査では2~3人、あるいはたった1人への調査を実施するケースが多くあります。サンプルが少ない分、前述のようなメリットがあるものの、一般的・平均的なデータを得ることは困難です。そのため、SEEDERでも定量的なデータと組み合わせながら分析しています。
また、定性調査では調査者の主観が強く反映される可能性があります。そのような事態を回避するためには、誘導するような質問を行わないスキルと、客観的なデータと比較する作業が必要といえます。
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加えて、データの解釈も重要な要素となります。こちらも、適切なフレームワークや方法論を使用するノウハウが求められるでしょう。社内に適切な人材がいない場合は、外注するのも一つの方法です。
参考:マーケティング担当者におすすめ!競合分析に使えるフレームワーク4選
定性調査の活用シーン
定性調査は、消費者の深層心理や行動を深く理解するための強力なツールであり、さまざまな場面で活用されます。具体的な活用シーンを通じて、定性調査がどのように役立つかを見ていきましょう。
新製品開発における定性調査
新製品開発の初期段階で定性調査を活用することは非常に効果的です。例えば、コンセプトテストやプロトタイプの評価を行う際に、消費者のフィードバックを詳細に収集することで、製品の改善点や新たなアイデアを発見することができます。グループインタビューやデプスインタビューを通じて、消費者が製品に対してどのような期待や懸念を持っているのかを深く掘り下げることで、市場投入前に製品の魅力を最大化することができます。また、行動観察を通じて、消費者が実際に製品をどのように使用するのかを理解し、ユーザーエクスペリエンスの向上に繋げることも可能です。
マーケティングキャンペーンの評価
マーケティングキャンペーンの効果を評価する際にも定性調査は重要です。広告のメッセージやビジュアルが消費者にどのように受け取られているのかを理解するために、グループインタビューやデプスインタビューを実施します。例えば、新しい広告キャンペーンを展開する前に、ターゲットオーディエンスに対して試作品を見せて反応を聞き出すことで、メッセージの効果や改善点を特定することができます。また、キャンペーン終了後に消費者の反応を詳細に調査することで、次回以降のキャンペーンの参考にすることができます。
ブランドイメージの調査
ブランドイメージを向上させるためにも定性調査は有効です。消費者がブランドに対してどのような印象を持っているのかを深く理解するために、デプスインタビューやエスノグラフィーを活用します。消費者が日常生活の中でどのようにブランドと接触し、どのように感じているのかを観察することで、ブランド戦略の改善点を見つけることができます。例えば、消費者の生活環境を訪問してブランド製品の使用状況を観察することで、ブランドに対するリアルな意見や感情を収集することができます。
顧客満足度の向上
顧客満足度を向上させるためには、定性調査を通じて顧客の声を直接聞くことが重要です。グループインタビューやデプスインタビューを通じて、顧客が製品やサービスに対してどのように感じているのかを詳細に把握します。例えば、カスタマーサポートの改善点を特定するために、顧客からのフィードバックを収集し、具体的な問題点や改善策を見つけることができます。また、訪問調査を通じて、顧客が日常的に直面している問題やニーズを理解し、それに基づいたサービス改善を行うことも可能です。
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成功するための定性調査の3つのポイント
最後に、マーケティング戦略を成功に導くための定性調査のポイントを3つご紹介します。
ポイント1. サンプルの選定
定性調査は、対象市場や顧客セグメントを理解するために行われます。サンプルの選定は、正確な結果を得るために重要です。選ぶべきは、適切なターゲット層の代表的な顧客であり、意見や感情を正直に表現できる人々です。ただし、新事業開発や新商品開発の場合はサンプルのペルソナは変化するため注意が必要です。
ポイント2. 調査の設計と実施
定性調査の設計と実施は、クオリティと信頼性を確保するために慎重に行う必要があります。適切な問い合わせ方法、質問形式、調査の手法を選択し、参加者が開放的に回答できる環境を提供することが重要です。
ポイント3. データの分析と解釈
定性調査から収集されたデータを分析し、そこからインサイトを得ることを目指しましょう。そのためには、データをテーマごとに整理し、共通の傾向やパターンを見つけることが重要です。また、得られた洞察をマーケティング戦略や実行方法に適用することで、ビジネスの成功率を高めることができます。
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まとめ
定性調査はマーケティング戦略を成功に導くための貴重なツールです。定量的なデータだけでは得られない、消費者の意見や感情、ニーズを理解するために欠かせません。また、正確なデータを収集し、それを適切に解釈することで、競争力のある戦略を立てることができます。
なお、定性調査で得られたデータは、定量的なデータとの組み合わせによって、より効果的な戦略を立てるための気づきを与えてくれます。本記事でご紹介したポイントを踏まえながら、自社のビジネスを成功させるためのマーケティング戦略を検討してみてください。
ただ、昨今は社内に定性調査のノウハウやマーケティングを専任で担当できる方が不足しているというお悩みもよく聞きます。そのような場合は、経験豊富な専門家を外部から招くのもおすすめです。SEEDERではそのような企業様の伴走支援も行っていますので、まずはお気軽にこちらからお問い合わせください。詳しくは下記の動画もご参考ください。