新規事業を成功に導く7つのプロセスと実践的フレームワーク

新規事業を成功させるには、明確な計画と体系的なアプローチが求められます。しかし、そのプロセスの複雑さや不確実性に直面し、途中で挫折してしまう企業も少なくありません。

本記事では、新規事業を成功に導くために必要な7つのプロセスと、それを支える実践的なフレームワークをご紹介します。新規事業を任された責任者やご担当者はぜひ参考にしてください。

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目次

新規事業とは?成功のために知っておきたい基礎知識

ビジネスの競争が激化する中、既存の収益源だけに頼ることはリスクが伴います。新規事業の立ち上げは、企業の成長を支える新たな柱を築く重要な手段です。しかし、新規事業には成功のためのポイントがいくつか存在します。

ここでは、新規事業の定義と重要性から、成功率を上げるために知っておくべき失敗の原因、事業を成功させるために必要な要素まで詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

新規事業の定義と重要性

新規事業とは、企業が新たに取り組む未開拓の市場や製品、サービスを通じて、収益の多角化や競争力の強化を図る活動のことを指します。既存事業を基盤とした改善や進化とは異なり、新しい価値を創出し、市場に提供することが目的です。

したがって、新規事業の重要性は企業の存続や成長にも直結します。例えば、競争が激しい市場では、他社との差別化が難しくなり、収益が減少するリスクが高まるでしょう。新規事業は、そうした状況から抜け出すための解決策となり得ます。

また、新規事業は企業にとって挑戦の機会でもあり、組織全体のイノベーションを促進する役割も果たします。現代の急速に変化する市場環境において、企業が競争優位を維持するためには、継続的な新規事業への取り組みが欠かせません。

成功率を上げるために知っておくべき失敗の原因

新規事業の失敗率は一般的に高いと言われていますが、その多くは共通する課題に起因しています。一つ目の失敗原因は市場ニーズの誤解です。十分な市場調査を行わずに事業を進めてしまうと、顧客の本質的なニーズに応えられないケースが多々あります。二つ目の失敗原因は不十分な計画とリソースの不足です。事業計画が曖昧であったり、必要な資金や人材が確保されていなかったりすると、計画通りに進めることが難しくなります。

最後に、リスク管理の不足も失敗につながる原因です。新規事業は予測できない問題がつきものですので、それらに迅速かつ柔軟に対応する仕組みが求められるでしょう。これらの失敗原因を事前に理解し、対策を講じることによって、新規事業の成否が分かれます。

新規事業に必要な要素とは

新規事業を成功に導くためには、以下の3つの要素が重要です。

  1. 市場の理解
  2. 競争優位性の確立
  3. リーダーシップの発揮

まず一つ目は市場の理解です。市場の規模、成長性、競争環境を正確に把握し、事業計画を市場の現実に基づいて設計する必要があります。二つ目は競争優位性の確立です。競合他社との差別化ポイントを明確にし、自社ならではの強みを市場に訴求できる戦略が必要です。製品やサービスの独自性が、顧客の関心を引きつける鍵となります。

最後に、リーダーシップの役割は見逃せません。リーダーはプロジェクト全体を俯瞰し、チームを適切に指揮しながら方向性を示す責任があります。また、困難な局面でもメンバーを鼓舞し、事業を軌道に乗せるための決断力が求められます。

新規事業の全体像と注意点について

新規事業を成功に導くためには、計画性と実行力が欠かせません。しかし、多くの企業が手探りで進める中で、途中で方向性を見失うことも少なくありません。ここでは、新規事業を進める全体のステップを明確化し、それぞれの段階で押さえるべきポイントや、計画を立てる際に活用できるフレームワークについて解説します。

新規事業を進める7つのステップとは

新規事業の進行には、明確なプロセスを設けることが成功の鍵です。そのプロセスは、大きく分けて7つのステップに整理できます。

  1. 市場調査とターゲット分析
  2. ビジネスモデルの設計
  3. 資金調達とリソースの確保
  4. プロトタイプの作成とテスト
  5. 事業計画書の作成
  6. 実行とプロセス管理
  7. 事業の改善と成長戦略

これらのステップを順を追って実施することで、事業の全体像が明確になり、進行上のリスクを最小限に抑えることができます。

また、各ステップが相互に関連し合うため、連続性を意識した取り組みが重要です。この7ステップをロードマップとして活用することで、進行中の混乱を防ぎ、事業を成功へと導く道筋が描けるでしょう。

各ステップで注意すべきポイント

7つのステップには、それぞれ特有の注意点と成果目標が存在します。例えば、市場調査ではデータの正確性が最も重要です。不十分な調査は事業の方向性を誤らせるため、最新のツールや専門家の力を借りることが必要です。また、ビジネスモデルの設計では、収益構造と競争優位性のバランスが成功の鍵となります。単に斬新なアイデアだけでなく、実現可能性を考慮した設計が求められるでしょう。

さらに、資金調達ではリスク管理が重要です。どの資金調達手段を選ぶかによって、将来の事業運営に大きな影響を与えるため、慎重な選定が必要です。最終的な成果として、各ステップを完了するたびに、事業の実行可能性が高まり、次の段階に進むための基盤が整います。ステップごとの達成目標を明確に設定することで、進行状況を適切に把握できるようになります。

フレームワークを活用した計画の立て方

新規事業を成功させるためには、計画段階で適切なフレームワークを活用することが非常に効果的です。代表的なものとして、ビジネスモデルキャンバスやPEST分析、SWOT分析などが挙げられます。これらのフレームワークは、事業全体の構造を視覚化し、重要な要素を体系的に整理するのに役立ちます。

例えば、ビジネスモデルキャンバスを使用すると、価値提案や顧客セグメント、収益ストリームなどを一目で把握できます。また、PEST分析は、外部環境の影響を評価する際に欠かせないツールです。これらを組み合わせることで、事業の強みと弱みを具体的に洗い出し、計画を緻密に構築することが可能です。フレームワークを用いることで、計画の抜け漏れを防ぎ、実現可能性を高める計画を立案できるでしょう。

新規事業を進める7つのステップを解説

新規事業を成功に導くためには、明確なプロセスを踏みながら段階的に進めていくことが重要です。本章では、新規事業における7つの具体的なステップを詳しく解説します。それぞれのステップがどのような目的を持ち、どのように実施すべきかを理解することで、事業の成功率を大きく向上させることが可能です。

また、各段階で直面する課題に備え、効率的に対処するためのポイントについても触れていきますので、ぜひ参考にしてください。

ステップ1:市場調査とターゲット分析

新規事業の第一歩は市場調査とターゲット分析です。市場調査の目的は、事業を展開する市場環境を正確に把握し、事業の成功可能性を評価することにあります。特に、需要の規模や競合の状況を把握することで、どのような市場戦略を立てるべきかが明確になります。ツールとしては、Googleトレンドや市場レポート、競合分析ツールが有効です。

また、ターゲット顧客を特定する際にはペルソナ作成が重要です。ペルソナは、顧客像を具体化することで、効果的なマーケティングや商品開発に直結します。正確な市場調査とターゲット分析により、新規事業の方向性が明確になるでしょう。

ステップ2:ビジネスモデルの設計

市場調査を踏まえた次のステップは、ビジネスモデルの設計です。ビジネスモデルキャンバスを活用すると、事業の価値提案、収益ストリーム、リソース要件などを体系的に整理できます。特に、競争優位性を築くためには、他社との差別化ポイントを明確にすることが必要です。

例えば、コスト削減を強みとするのか、独自の価値提案を提供するのかを検討します。また、収益化戦略では、価格設定や収益源の多様化が重要です。実現可能性と競争力を兼ね備えたビジネスモデルが、新規事業の基盤となるでしょう。

ステップ3:資金調達とリソースの確保

新規事業を推進するには、十分な資金とリソースが必要です。資金調達の方法としては、投資家からの資金提供、融資、クラウドファンディングなどが一般的です。選択肢を比較し、自社に最適な方法を選ぶことが重要です。

また、人材や設備などのリソース確保も、事業成功の要です。優れた人材を集めるためには、明確なビジョンや魅力的な条件を提示する必要があります。さらに、資金調達時には法的リスクを十分に検討し、透明性の高いプロセスを保つことが求められます。

ステップ4:プロトタイプの作成とテスト

新規事業の成功には、早期にプロトタイプを作成し、仮説を検証することが不可欠です。プロトタイプは、事業のアイデアを具体化し、市場でのフィードバックを収集するための手段です。

作成手順としては、まず最小限の機能を持つプロトタイプを構築し、顧客やステークホルダーからの意見を反映させます。この段階での失敗は、改良のチャンスと捉えるべきです。迅速な仮説検証により、事業の成功可能性を大きく向上させることができます。

ステップ5:事業計画書の作成

次に必要なのは、事業計画書の作成です。この計画書は、事業のビジョン、具体的な戦略、収益予測などを明確に示すものです。投資家を納得させるためには、データに基づいた信頼性の高い内容が求められます。

構成としては、事業概要、ターゲット市場、競合分析、収益モデル、リスクマネジメント計画が含まれます。また、ロードマップを無理のない形で作成することで、実行可能性を示すことが重要です。

ステップ6:実行とプロセス管理

計画を実行に移す段階では、プロセス管理が成功の鍵を握ります。具体的には、KPIを設定し、進捗を定量的に測定します。これにより、事業の進捗状況をリアルタイムに把握することが可能です。

その際、プロセス管理ツールを活用すると、業務効率化や生産性向上が期待できるでしょう。さらに、チームのモチベーションを下げないために円滑なコミュニケーションも欠かせません。このように、新規事業は単に計画通りに進めるだけでなく、状況に応じた柔軟な対応力も求められます。

ステップ7:事業の改善と成長戦略

最後のステップでは、事業を改善し、成長戦略を策定します。PDCAサイクルを活用して、実行した施策を評価し、改善点を明確にします。成長フェーズでは、マーケティング戦略を拡大し、顧客基盤を広げることが求められます。

また、継続的なイノベーションを推進することで、競争優位性を維持できます。この段階では、短期的な利益だけでなく、長期的な視点で事業を発展させることが重要です。

新規事業を進める際に役立つフレームワーク

新規事業を成功に導くためには、適切なフレームワークを活用し、戦略を明確にすることが不可欠です。フレームワークは、複雑な状況やデータを整理し、合理的な意思決定をサポートするツールとして機能します。

ここでは、新規事業を進める際に役立つフレームワークを3つご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

PEST分析

PEST分析は、新規事業を取り巻く外部環境を理解するためのフレームワークで、4つの観点から市場を分析します。

  1. 政治的要因(Politics)
  2. 経済的要因(Economy)
  3. 社会的要因(Society)
  4. 技術的要因(Technology)

このフレームワークを活用することで、規制や税制の変化、経済成長率、消費者の行動変化、技術革新といった要因を体系的に評価できます。たとえば、新規事業が進出を検討している市場で新たな規制が導入される場合、事前に対応策を考えることが可能です。外部環境を俯瞰することで、事業のリスクとチャンスを的確に把握できるでしょう。

SWOT分析

SWOT分析は、事業の内外の状況を整理するためのフレームワークです。強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つに分けて評価を行います。内部要因である強みと弱みを分析することで、自社の競争力や課題を明確にできます。また、外部要因である機会と脅威を検討することで、市場環境への対応策を検討できます。たとえば、強みとして「技術力の高さ」を挙げ、弱みとして「マーケティングリソースの不足」を認識することで、技術力を活かしつつ効果的なマーケティング戦略を構築する道筋を描けます。このフレームワークは、事業の方向性を具体化する上で非常に有効です。

ポジショニングマップ

ポジショニングマップは、新規事業が市場でどの位置にあるのかを視覚的に示すフレームワークです。競合製品やサービスと比較し、自社の強みや独自性を明確にします。たとえば、価格と品質を軸にマッピングすることで、低価格戦略を取る競合が多い場合に高品質を訴求する差別化戦略を検討できます。また、消費者にとっての価値を再認識し、顧客の視点に立った市場戦略を構築する手助けとなります。ポジショニングマップを活用することで、自社の優位性を最大限に引き出し、競争力を高めることができるでしょう。

事例から学ぶ!新規事業の作り方

成功した新規事業には、共通して緻密な計画と柔軟な対応が存在します。ここでは、実際に新規事業を立ち上げた企業の成功事例を3つご紹介します。それぞれの取り組み背景、直面した課題、採用した対策、そして得られた結果を明確にし、新規事業に挑戦する際の具体的なヒントを得られる内容にまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

事例1:コマツ

建設業界では、労働人口の減少や現場管理の非効率性が大きな課題となっていました。コマツはこれに対し、建設現場の生産性を向上させる新しいソリューションの必要性を認識しました。そこで同社は、「スマートコンストラクション」というICTを活用したサービスを展開。ドローンによる地形測量、AIを活用した施工計画の最適化、重機の自動運転など、先端技術を取り入れたプラットフォームを開発しました。これにより、現場のデジタル化を推進し、全体の効率性を向上させました。

その結果、施工現場の作業時間を大幅に短縮し、労働力不足への対応が可能となりました。また、環境負荷の軽減にも貢献し、業界内外から高い評価を得ています。ICTを活用したスマートコンストラクションは、コマツの新たな競争優位性として定着しました。

事例2:ダイハツ工業

高齢化社会の進行に伴い、介護施設の送迎業務は増加し、職員の負担が大きな課題となっていました。特に、送迎計画の作成や運行管理は手作業で行われることが多く、効率化が求められていました。

ダイハツは、スマートフォンを活用した送迎支援システム「らくぴた送迎」を開発しました。このシステムは、施設が保有する全ての車両で利用可能で、誰でも簡単に最適な送迎計画を作成できます。また、作成された計画は各ドライバーのスマートフォンに送られ、運行記録やキャンセル通知の相互連絡も可能となり、運転中の業務負荷を軽減します。 

実証実験の結果、送迎計画作成時間が半減し、複数のスタッフが計画作成に参加できるようになりました。また、送迎車両の現在位置が把握できるため、利用者からの問い合わせにも迅速に対応可能となりました。さらに、車両の稼働状況の見える化により、実際に稼働する車両数を減らすことができ、業務の効率化とコスト削減に寄与しました。 

事例3:三越伊勢丹

従来の百貨店モデルが変化する中、三越伊勢丹は新たな収益源の確保とデジタル分野での競争力強化が求められていました。三越伊勢丹が運営する「ISETAN STUDIO」は、当初、社内のオンラインストア向けに商品撮影を行うスタジオとして設立されました。しかし、百貨店業界の変革と新たな収益源の確保を目指し、社外の企業向けに撮影サービスを提供するBtoB事業へと拡大しました。 

「ISETAN STUDIO」は、社内向けの撮影サービスから、外部企業向けのBtoB撮影サービスへと事業領域を拡大しました。これにより、他社のECサイトやカタログ用の高品質な商品撮影を請け負う体制を整えました。さらに、AI技術を活用したモデル撮影サービスなど、先進的な取り組みも開始しています。 

この取り組みにより、「ISETAN STUDIO」は多様なクライアントからの撮影依頼を受けるようになり、百貨店の枠を超えた新たなビジネスモデルを確立しました。また、AIモデル撮影サービスの導入により、撮影効率の向上やコスト削減を実現し、業界内での競争優位性を高めています。

まとめ

新規事業の成功には、明確なビジョンと実行可能なプロセスが必要不可欠です。本コラムでは、基礎知識の整理から具体的なステップ解説、役立つフレームワークの活用法、そして実際の成功事例まで幅広く取り上げました。

これから新規事業に挑戦しようとする方は、本記事でご紹介した知識を実際のプロセスに取り入れてみてください。一歩一歩進むことで、アイデアが具体的な成果へと結びつく瞬間を体験できるでしょう。

一方、新規事業を始める際は膨大な作業が発生します。適宜、外部リソースを活用し、無理のない範囲で期間を短縮しながら、開発を進めていきましょう。また、新規事業を進める中で、失敗するリスクが高いと判断した場合には、早期に撤退することも重要です。

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この記事を書いた人

吉冨 剛典 吉冨 剛典 マーケティング担当

大手企業・ベンチャー企業にて事業開発を10年以上経験。
市場動向に即したビジネススキームの構築に強み。
PoC推進支援、事業計画の策定など新サービス / ブランドの立ち上げ実績多数。

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