Z世代は、従来のX世代・Y世代に比べて、SNSを利用した情報収集や購買行動が非常に顕著です。サステナビリティやダイバーシティに配慮した商品や「自分らしさ」を表現できるものを好む傾向が見られるため、企業の商品開発やマーケティング活動においては、社会課題への配慮を伝えることも必要となります。
また、Z世代の意見やアイデアを取り入れつつ、SNSを通して情報発信や双方向の交流を行うことで、彼らからの支持を獲得できます。
この記事では、Z世代の特徴や価値観、消費行動に加えて、ミレニアム世代との違いや彼らに訴求するためのポイントなどを紹介しています。Z世代向けの施策で避けるべきNGポイントもまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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Z世代とは? 定義を解説
Z世代とは、1995年から2010年頃に生まれた人々を指す言葉です。この世代は、インターネットやデジタル技術が普及している時代に育ちました。2024年現在、14歳から29歳くらいまでの方が該当します。
「Z世代」の由来
Z世代という言葉はアメリカで生まれた概念で、Y世代(1981年〜1996年生まれ)の次の世代として位置づけられています。
社会背景として、9.11のテロや金融危機などの出来事があったほか、インターネットの普及、ソーシャルメディアの浸透、デジタル技術の発展による情報へのアクセスや情報発信手段の登場も、Z世代に強い影響を与えています。そのため、彼らは「これまでの世代とは異なる特徴を持つ新しい世代」として注目されています。
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これまでの世代とZ世代の価値観を比較
Z世代と比較してみると、X世代(1965年〜1980年生まれ)やY世代(1981年〜1996年生まれ)の価値観には以下のような違いが見られます。
X世代
X世代は、1965年から1980年頃に生まれた人々を指す言葉です。彼らはデジタル技術の急速な発展を経験し、インターネットや携帯電話の普及によって生活が大きく変わりました。このX世代の人々は、家族やキャリアに重点を置き、経済的な安定を求める傾向があります。
一方で、彼らは時間的制約も抱えているので、彼らのニーズを満たしつつ、「便利で効率的」という商品・サービスの価値を伝えるアプローチが有効です。また、信頼性や品質にも注目する傾向があるため、それらの要素を強調するマーケティング戦略も実施されています。
Y世代(ミレニアル世代)
Y世代は1981年から1996年生まれの人々を指します。彼らは、インターネットが普及し、ソーシャルメディアが台頭した時代で成長してきた世代です。そのため、このY世代の人々は、自己表現や個人の幸福を重視し、新しい体験やトレンドに敏感な傾向があります。
そのため、マーケティング戦略では顧客の関心や価値観に合わせたアプローチとして、ブランド体験やストーリーテリングの重要性が高まってきました。さらに、インフルエンサーマーケティングやユーザー生成コンテンツ(UGC)なども効果があるとして注目されています。
【補足:ユーザー生成コンテンツ(UGC)とは?】UGCとは、企業側が作成したコンテンツではなく、ユーザーによって作られたコンテンツのことです。例えば、飲食店のレビュー、商品の購入者のクチコミや評価、SNS上の投稿やコメントなどがUGCに含まれます。 |
X世代・Y世代との価値観の違い
1.デジタルネイティブ(スマホ・タブレットの浸透+テレビの視聴時間が減少)
X世代やY世代は、デジタル技術が広まり始めた時代に育った世代です。それに対し、Z世代は幼少期からデジタル技術に触れて成長しており、まさにデジタルネイティブです。さらに、スマートフォンやソーシャルメディアが生活の一部となっており、それらを巧みに使いこなしています。
一方で、Z世代ではテレビを見る時間が減少しており、その代わりにインターネットや動画配信サービスを利用して映像を見る時間が増えています。
2.ショート動画、音声配信(活字に触れる機会の減少)
X世代やY世代は、紙の本や雑誌を読む機会が以前は豊富だったこともあり、今でも若い世代に比べて活字に触れる時間が多い傾向があります。それに対し、Z世代は情報を入手する手段として、主にショート動画や音声配信を活用しています。
3.消費行動の変化
X世代・Y世代の人々は、消費意欲が高く、ブランドやトレンドに敏感な傾向を持っています。これは、彼らが生まれ育った高度経済成長期の影響も大きいです。
それに対し、Z世代の人々は、個々のニーズに合わせたカスタマイズやオンデマンドのサービスに興味を持つ傾向があります。さまざまな情報に触れる機会が増えた結果、X世代・Y世代よりも環境や社会貢献に対する関心が高まっており、持続可能な商品や企業に対し、積極的に支持を示す傾向も見られます。
α(アルファ)世代にも注目が集まる
これまでの世代とは異なる価値観を持つZ世代が、マーケティングのターゲットとして注目される中、2010年から2024年頃に生まれた「α世代」にも関心が高まっています。彼らはまだ若い世代であり、消費行動はまだ明確には定まっていません。しかしながら、今後ますます発展していくテクノロジーの影響を、Z世代以上に受けながら成長していく世代として注目されています。
デジタルネイティブであるZ世代・α世代は、テクノロジーに対する親和性が高いため、商品開発やマーケティング戦略も、彼らの成長にあわせて変化していくでしょう。
Z世代が注目される2つの理由
需要の増加
Z世代は、現在20代前半から10代までの若者たちです。将来、X世代・Y世代が多くの市場で消費者の主体ではなくなっていく中で、Z世代が積極的に商品やサービスを消費することが予想されます。そのため、彼らは企業やマーケターにとって重要なターゲットとなるでしょう。
Z世代は、新しいトレンドやブランドに興味を持ち、それに高い需要を示しています。そのニーズに対応するためにも、彼らに適したマーケティング戦略を実行することが重要です。
発信力の高さ
Z世代は、ブログやSNSで自分の意見やアイデアを共有し、他人との交流を楽しむことを好む傾向があります。そのため、彼らは「情報の発信力」も非常に強力であり、情報を受け取る側だけでなく、発信する側としても活躍しています。したがって、多くの人々に影響を与える世代としても注目されています。
Z世代の特徴 5つ
ここでは、Z世代の大きな特徴を5つご紹介します。マーケティング戦略では、彼らの特徴や価値観に合わせたアプローチが必要です。
特徴1. SNSへの慣れと高い承認欲求
Z世代はデジタルネイティブであり、スマートフォンやソーシャルメディアを積極的に活用し、自分自身の日常生活や考えをSNS上で共有しています。
彼らのそのような行為は、多くのフォロワーや「いいね」の獲得を意識しているため、他の世代よりも承認欲求が高くなり、SNSを通じて自己肯定感を得る傾向があります。
ただ一方で、あえて「いいね」を避けたり、インフルエンサーの発信よりもコメント欄の投稿を参照するなど、1つの情報を鵜呑みにするのではなく、いくつかの異なる意見を比較した上で、情報を取捨選択する能力の高さもうかがえます。
特徴2.効率性(コスパ・タイパ)の重視
Z世代は効率的に行動することを重視しています。そのため、彼らは「コスパ(コストパフォーマンス)」の良い商品やサービスを求め、それに投資することで、物事をスムーズに進めることを好む傾向があります。
また、近年よく耳にする「タイパ(タイムパフォーマンス)」に重点を置く世代として、マルチタスク(複数のことを同時にこなす能力)が得意な人々もいます。複数のアプリケーションを使ったり、同時に複数のタスクをこなすことにも慣れている一方で、あえて時間をかけて取り組む部分にも興味を持っています。
参考:
【有料記事】「レトロ愛好Z世代」の“ハイブリッド消費” 4つのインサイト|日経クロストレンド
特徴3.環境問題・社会問題への高い関心
Z世代には、地球環境や社会問題に対する高い関心も見られます。彼らは持続可能性や社会的な貢献に関わる活動に参加し、それを購買行動にも反映させる傾向があります。
また、多様性やダイバーシティへの関心も高く、性別や人種に対する固定観念よりも、他者への共感や理解を大切にすることも、Z世代の大きな特徴といえます。
特徴4.消費による体験・価値を重要視
Z世代は、所有することよりも、消費による体験や価値を重視しています。彼らは、商品やサービスを単に使うだけでなく、新しい体験や感動を求めています。
要するに、物質的な所有だけでなく、その所有物がもたらす経験や感動、そしてそれによる自己成長や自己表現も大切だと考えます。
特徴5.未知へのチャレンジに対する苦手意識
Z世代は新しい挑戦に不安を感じている一方で、「失敗やリスクを恐れず、チャレンジすることで自己成長を図りたい」という意識も持っています。
これには、彼らが情報過多の時代に生まれたため、多くの選択肢や可能性を知っていることが影響しています。したがって、企業は商品やサービスの信頼性を高めるために、簡潔にわかりやすく、最大限の情報を提供し、匿名性やセキュリティの高さなども正確に伝えることが重要です。
参考:Z世代のマーケティング成功事例11選!戦略立案のポイントもご紹介
Z世代の心をつかむ商品・サービスの傾向は?
Z世代の特徴を捉え、彼らの心をつかんでいる商品・サービスの傾向について説明していきます。
従来は許容していた負担を軽減する商品・サービス【スマート家電、AI関連サービス】
まずは、テクノロジーとの統合が感じられる商品・サービスです。Z世代はテクノロジーに精通しているため、商品やサービスにテクノロジーを組み込むことで彼らの関心をひくことができます。それらを購入することで、コスパ・タイパの向上が期待できることを伝えましょう。
例えば、「Amazon Alexa」や「Google Home」などのスマートホームデバイスや、「ChatGPT」「Gemini」などの生成系AIを活用できるものは、彼らにとって魅力的な選択肢となります。
マーケティング戦略としては、いま流行しているものでなく、これからの流行を感じさせるものを提案することが重要です。
ストレスを未然に回避できる製品・サービス【環境配慮型】
次に、環境に配慮した商品・サービスです。Z世代は環境問題に関心を持っている人が多いため、持続可能な商品やサービスに対して好意的な反応が期待されます。マーケティング戦略においては、再生可能エネルギーの利用やエコパッケージ化などの取り組みを積極的に伝える企業が増加しています。
ただ、Z世代へ訴求する際は、直接的に環境への配慮を伝えるのではなく、デザインや機能などの魅力を強調し、彼らがそれを手にした後に「環境へ配慮している」事実が自然と伝わるような工夫が効果的です。言い換えると、「エコ」や「サステイナブル」をアピールするのではなく、それを商品・サービスの特徴の1つとして示す方法がおすすめです。
選択の自由度を高めた製品・サービス【多様性】
Z世代は、多様性・包括性を重要視しているため、商品・サービスにおいても、さまざまな人々のニーズに対応する必要があります。従来の枠にとらわれない新しい取り組みや、偶然の出会いを楽しめることが魅力とされるでしょう。
また、消費者自身に使い方や効果を委ねたり、限定しなかったり、体験を生み出すことができるものなど、「消費者側が考え、選択する体験」を提供するのもおすすめです。
マーケティング戦略では、商品・サービスを利用するさまざまな人の姿を積極的に伝えることで、彼らに訴求することができます。
Z世代に有効なマーケティングのポイント4選
Z世代をターゲットとしたマーケティング戦略では、具体的にどのような施策が効果的かを、以下の4つのポイントに分けてご紹介します。
ポイント1. 対話形式のコンテンツとゲーミフィケーションの活用
Z世代はデジタルテクノロジーに慣れ親しんでいるため、双方向のコミュニケーションやゲーミフィケーション(ゲーム化)に興味を持ちます。例えば、マーケティング戦略では、ユーザー参加型のコンテンツやゲーム要素を取り入れることで、彼らの関心をひくことができます。さらに、双方向のやり取りを通して、ブランドとのつながりを強化することも重要です。
ポイント2. ソーシャルメディアとUGCの活用
Z世代は、日常的にソーシャルメディアを使い、プラットフォーム上でさまざまな情報を共有し、交流しています。したがって、マーケティング戦略では、ソーシャルメディアを使ったキャンペーンやUGCの活用が有効です。
彼らが自分自身の声や意見を表現できる機会を提供することで、ブランドとの関係を強化することができます。
ポイント3. ストーリーテリングとブランド体験の提供
顧客との親密な関係を築くには、ストーリーテリングを通じて感情的な結びつきを生み出し、ブランド体験を通して顧客がブランドの魅力を実感することが重要です。
ストーリーテリングを活用することで、魅力的なストーリーを通じて、ブランドへの共感を引き出すことができます。ブランド体験では、Z世代の人々がブランドを実際に体験することで、そのブランドの魅力や優位性を実感し、購買意欲が高まるといわれています。
ポイント4. 社会的なメッセージと持続可能性の発信
Z世代は社会的な公正や環境問題に敏感で、「企業やブランドが持続可能性に取り組んでいるかどうか」を購入前に確認する傾向があります。そのため、マーケティング活動では、自社が行っている環境への配慮や、社会的な平等を実現するための取り組みを、積極的に伝えることが重要です。
Z世代にはNG!訴求するうえでの注意点2つ
最後に、Z世代向けのマーケティング活動の際に、注意すべきポイントを2つご紹介します。自社のマーケティング戦略を考える上で避けるべきポイントとして、ぜひ参考にしてください。
注意点1. デジタルプラットフォームの活用
Z世代はデジタルネイティブであり、インターネットやソーシャルメディアを積極的に利用しています。当然、マーケティングではデジタルプラットフォームを活用することが重要ですが、慎重に行う必要があります。
彼らは他の世代よりも情報に敏感であり、広告や宣伝に対しても慎重な態度を持っています。そのため、インターネット上での広告やプロモーション活動は、彼らの関心をひくためには魅力的で興味深いものでなければなりません。また、トレンドのキャッチアップも大切です。
しかしながら、SNSやコンテンツの流行りは急速に変化しているため、社内のマーケティングチームのみでは、適切な対応が難しいです。必要に応じて、Z世代の情報を収集したり、マーケティング戦略立案の専門家に相談するなど、デジタルプラットフォームの活用にも戦略・対策が必要です。
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注意点2. 個別化とパーソナライゼーション(匿名性の担保)
Z世代は個別化された体験を求め、自分らしさを大切にしています。そのため、マーケティング活動では、彼らに対してパーソナライズされたメッセージやオファーを提供することが重要です。
一方で、個別化を行うときには、プライバシーを保護する必要があります。多くの人々はSNS上で「いいね」をあえて押さないなど、自分の情報を慎重に共有しているためです。
したがって、匿名性やプライバシーの重要性を強調し、個人情報の公開・非公開を選択できるような仕組みの構築も重要となります。
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まとめ:Z世代には「任意参加型の体験」を提供することが大切
この記事では、Z世代の特徴や消費行動の傾向、マーケティングを行う際のポイントについて解説しました。Z世代はデジタルネイティブであり、SNSに慣れ、高い情報発信力を持っています。また、効率性を重視する一方で、環境問題や社会問題、消費による体験や価値に高い関心があります。これらをマーケティング戦略に取り入れるためには、Z世代の関心や価値観に合わせたアプローチが重要です。
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