新規事業開発においては、アイデアをより具体的なものにするためにも、組織の概要や事業に必要なリソース、今後の計画などを記載した「事業計画書」を作っておくことをおすすめします。作っていく中で、事業への理解を深められるというメリットもあります。また、一部業務を外注する場合にも、その事業計画書をもとに、社内外の連携をスムーズに行えるでしょう。
しかしながら、「作成するタイミングがわからない」「どのようなフォーマットで作れば最適なのかがわからない」とお悩みの方も少なくありません。
そこで本記事では、事業計画書の作り方について、計画を立て始めるタイミングや含めるべき要素、さらにより良い事業計画書にブラッシュアップしていくためのポイントなどをご紹介します。プロジェクトメンバー間の認識共有や資金調達に向けた書類の準備にもぜひご活用ください。
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事業計画の作成を開始するタイミングは?
事業計画書とは、「ビジネスプラン(事業計画)」を可視化した書類のことで、年度ごとに作成するのが主流です。フォーマットに厳密な決まりはないものの、ほとんどの場合、組織の概要、背景、戦略などの情報や、達成したい目的や目標、それらを達成するための過程などを記載します。
なお、事業計画書は、会社の設立時や事業の立ち上げ時に作成するものですが、実は提出の義務はありません。しかしながら、作成中にビジネスプランをより明確にできるほか、事業が走り出した後にも改善案を考えやすくなるため、新規事業のアイデアを絞り込んだ段階で一度作成しておくことをおすすめします。
参考:事業計画の考え方とは?社内稟議が通りやすくなる事業計画書の作成方法を徹底解説
はじめに計画を立てることで、事業理解を深められる
事業計画書を作成するメリットは以下のとおりです。
- 客観視して改善できる
- 事業内容を再整理できる
- 現実的で無理のないスケジュールを立てられる
- メンバー内・社内外に方向性を共有できる
- 資金調達時の判断材料となる
事業計画書を作成するということは、ビジネスのアイデアを言語化・可視化するということです。それにより、事業のアイデアを客観的に見直しやすくなり、初期段階で事業を改善するヒントを見つけられるようになります。
そして事業計画書にもとづき、現実的で無理のない計画を立てることも可能です。発想したアイデアを事業として実現していく段階でも、事業計画書が地図がわりとなり、具体的なスケジュールもイメージしやすくなるでしょう。
さらに、事業開発に必要なアドバイザーを招く際にも、事業計画書は役立ちます。ビジネスを見える化したものを先に共有しておけば、第三者も事業の全体像を認識しやすくなり、さまざまな意向を伝えられるようになります。
また、事業計画書は主に、事業内容、戦略や収益予想などを説明するための書類ですが、新規事業の立ち上げに資金調達が必要な場合にも活用できます。例えば、金融機関等への説明時には、新規事業の実現可能性を十分に伝えるためのツールとして役立つはずです。
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絞り込んだアイデアをもとに、簡易版の事業計画書づくりに着手する
アイデアを出し、それを絞り込めたら、事業のビジネスモデルを作り込むプロセスに移ります。このときに、頭の中にあるビジネスプランや資金計画を事業計画書に落とし込んでいくことが重要です。
自社の強み・競合調査・中長期的な投資と売上の計画などをサービスデザインの観点で考え、作成に取り掛かってみてください。(参考:ビジネスの成果を向上するサービスデザインの考え方とフレームワーク【まとめ】)
とはいえ、ゼロから事業計画書を作成するのは、なかなか大変なことだと思います。下記のように、参考になる各種テンプレートも公開されていますので、そのようなものもぜひ取り入れてみてください。
ただし、テンプレートを活用しても、資料を作り上げるためには多くの時間、手を動かす必要があります。自社内のリソースが足りない場合には、起業経験やスタートアップの立ち上げ経験がある外部の人材に委託するという方法もありますので、検討してみてはいかがでしょうか。
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参考テンプレート
公開元 | URL |
日本政策金融公庫 | No.27 事業計画書(中小企業経営力強化関連用) |
Microsoft | Office テンプレート > 事業計画書 |
事業計画書に必要な8つの要素
ここからは、事業計画書の中身に関するお話になります。まずは、事業計画書の構成要素をご紹介します。新規事業の開発時に作る簡易の事業計画書には、少なくとも以下の8要素を含めましょう。
【事業計画書に記載する8つの要素】
1. エグゼクティブサマリー(事業内容)
2. ビジョン(理念、目的) 3. 想定ユーザー 4. サービスデザイン(自社サービスの特徴、強み) 5. キーパスシナリオ(販売、マーケティング戦略) 6. 競合サービス(市場環境、競合など 統計データなどの資料を表やグラフで) 7. プレイヤー(創業者、創業メンバープロフィール) 8. ビジネスモデルと儲けの仕組み |
それぞれの要素について、解説していきます。
要素1. エグゼクティブサマリー(事業内容)
そのサービスが「どのようなサービスなのか」ということを簡潔に表します。自社の主な事業内容を記載するとよいでしょう。
要素2. ビジョン(理念、目的)
この事業を実行する社会的な意義をまとめます。「なぜ、この事業をやりたいのか」を明らかにしましょう。
要素3. 想定ユーザー
ターゲットとなる顧客はもちろん、サービスに関わるすべてのステークホルダー(利害関係者)を具体的に示すことが大切です。ステークホルダーマップを挿入すると、初見の方にも説明しやすくなるでしょう。
要素4. サービスデザイン(自社サービスの特徴、強み)
サービスのプロセスを場面ごとに表したサービスの設計図です。そして、この部分を作成する際におすすめのツールとして「サービスブループリント」というフレームワークがあります。
顧客とのコミュニケーションといった表側の部分(フロントステージ)だけではなく、その裏側で動いている従業員などの動き(バックステージ)も示すことで、よりサービスの全体像が伝わりやすくなります。詳しくは、下記の記事をご参照ください。
参考:ビジネスの成果を向上するサービスデザインの考え方とフレームワーク【まとめ】
要素5. キーパスシナリオ(販売、マーケティング戦略)
「キーパスシナリオ」とは、販売やマーケティングの戦略のことです。自社で計画している事業が、実際に世の中に出ていったときに、「どのように認知されるのか」「顧客からそのサービスを使ってみたいと思われるのか」ということを考えていきます。
さらに、「実際にそのサービスがどのように使用され、使用後にどのような価値を感じ、また使いたいと思ってもらうのか」というところまでを、一連のシナリオとして表し、それを事業計画書に記載します。
要素6. 競合サービス(市場環境、競合の情報)
市場環境や国内外の競合などについても把握しておく必要がありますが、そのためには時間とお金がある程度かかるでしょう。
事業計画書に記載する際には、知り得た情報をそのまま載せるのではなく、統計データなどの資料を表やグラフにして、見やすい状態に整えてから盛り込むことも重要です。
要素7. プレイヤー(創業者、創業メンバー)
新規事業は、自社の人間だけでは進められないことが多々あります。そのため、事業を形成していく上で必要となるプレイヤーに関して、ここで整理しておきましょう。
プレイヤーごとに得意な分野や専門領域もあるため、ただ名前を挙げるだけではなく、プロフィールとともに記載しておくことも重要です。
要素8. ビジネスモデルと儲けの仕組み
ビジネスモデルの単なる図解ではなく、人とモノとお金の動きをまとめた図を入れることも必要不可欠です。
特に、アイデア重視の事業開発の場合、生産方法や仕入先などの情報の記載が疎かになりがちです。プロセスごとに必要となる人員や予算感などについて、現実的な数字を記載しておきましょう。
また、現状のプランを十分に伝えるためには、売上原価などの見込みも数字で記載します。あわせて、利益に関する計画も入れておくことが重要です。
参考:ビジネスの成果を向上するサービスデザインの考え方とフレームワーク【まとめ】
事業計画書を作る際の2つの要点
事業計画書を作成する際に重要なポイントは、初期段階に作り込みすぎないことです。また、「一度作って終わり」でもありません。
アイデアを絞り込んだ初期段階には簡易な事業計画書を作成し、その後、事業の改善に取り組んだり、何か課題が明らかになったりしたときに事業計画書も改善していきましょう。
ただし、一気に改善しようとすると事業計画にズレが生じたり、本来の方針がブレたりする恐れがあります。そのようなことを回避するためには、定期的にミーティングを開き、その都度、計画の中身を見直していく方法をおすすめします。
ポイント1. 初期段階ではあまり作り込まない
事業計画には、売上の構成や原価構造などを記載します。これらの情報について、事業をリリースするまでは、オープンデータなどを活用し、可能な範囲での記載でも問題ありません。
まずは簡単にでも作成してみることが大切です。それにより、アイデアのビジネスとしての成否を確認できるでしょう。
そして、はじめから作り込みすぎないことも、重要なポイントといえます。なぜなら、実証実験をしていない数字は、サービスの価格を過大評価、あるいは過小評価していることも多々あるためです。
実証実験を経た、より正確性の高い数字であれば、事業計画書の説得力も増すでしょう。実証実験の結果によっては、計画そのものを見直す場合もあります。
「あとから数字を変えてよいのか」と驚かれるかもしれませんが、前述の実証実験を行う前提があれば、最初に作った事業計画書の数字はあとでいくらでも変更できると考えてよいでしょう。むしろ、実証実験を行って数字を更新していくことによって、より成功率の高い事業に磨いていくことができます。
参考:事業計画の考え方とは?社内稟議が通りやすくなる事業計画書の作成方法を徹底解説
ポイント2. 定期的にブラッシュアップする
簡易な事業計画書を作成した後は、2週間に1回程度チーム内で進捗共有を行いながら、「自社のリソースがもっと使えるのではないか」「ターゲットは、本当はこのような人のほうがよいのではないか」といったディスカッションを繰り返しましょう。その中で、ビジネスモデルやサービスの提供方法をブラッシュアップしていきます。
そして、実証実験を行った後は、収支計画の作成を進めてください。この収支計画では、事業を進める上で発生する収入と支出の差を算出するため、「収入」には売上や借入金、「支出」には仕入や借入金の返済などが該当します。
事業計画とは異なり、収支計画ではキャッシュの動きに着目することが大切です。年度全体での収支を明らかにすれば、継続的に利益を計上していくためにキャッシュがどのくらい必要なのかを把握できるでしょう。
参考:
新規事業開発のプロセス10個をプロジェクト初任者向けに解説!検証・改善方法も紹介
【ブラッシュアップのコツ】見やすい事業計画書の作り方とは?
最後に、見やすい事業計画書を作るためのコツとして、ブラッシュアップする際に着目すべきポイント7つをご紹介します。
1. 要点を事前に整理しておく
2. 細かく記載する 3. 図などを挿入して見やすくする 4. フォーマットを統一する 5. 調査内容を付記する 6. 数値的根拠を記載する 7. 第三者に説明し、フィードバックをもらう(あるいは 第三者に外注する) |
事業計画書の作成時には、上記をチェックシートのように確認してみてください。なお、本記事でご紹介した内容や、継続的に収益を得る事業を開発するために必要なサービスデザインについて、下記の資料に詳しくまとめて公開しています。そちらもぜひご参照ください。
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まとめ
本記事では、事業計画書の作成に必要な8つの要素や、よりよい事業計画書の作り方のコツをご説明しました。新規事業においては、初期段階に簡易な事業計画書を作り、実証実験を行って数字を更新することが重要です。また、定期的に中身をブラッシュアップすることも、事業の成功率を高めるために大切だといえます。
なお、当社では事業計画書を作成する人手が足りない、経験がないという場合におすすめの人材のマッチングサービスも提供しています。また、事業の基盤となるアイデア発想や事業分析の支援も行っていますので、よろしければこちらからお気軽にお問い合わせください。